No such thing as true love



映画『マレフィセント』感想(ネタバレ有)



全編にわたって、ひたすらアンジェリーナジョリー無双!の映画。この映画を作るにあたって「マレフィセントは私だ」と、アンジーは言ったとか。彼女の人生の苦難や養子を迎えて育てているといった私的な背景とも絡めれば、ますますさまざまな角度から読み解くことができるでしょう。そして、だんだん大きな角や角張った頬骨がセクシーにみえてきます。ルナ・デル・ソルが歌う主題歌が素晴らしい。

いろんな批評や解説があるみたいだけど「名誉欲や出世欲に溺れた男が、初恋の彼女を裏切って陥れて危害を加えたので、女性がが怒って復讐するお話」とだけ要約するのには、かなーーーり抵抗を感じます。(「もっと女の嫉妬と情念を描いてほしかった」とかいう男性陣の感想も見かけたけど、ええ〜?!とびっくり。そりゃーあなたの願望じゃないのwwwみたいな)

マレフィセントは、単に男を恨んで嫉妬したから呪いをかけたわけではない。自分自身の誇りであり、自由と力の象徴である大きくて強い翼を、心を許した相手である彼から卑劣な手段で不当に奪われた。マレフィセントが復讐として呪いをかけた最大の理由はここに尽きるはずです。彼女の心を傷つけただけではなく、自由と誇りの象徴を暴力的に奪ったのだから、単なる心変わりや裏切りとは桁違いに酷い仕打ちだとしか思えません。

オープニングから前半、最後に翼を取り戻してからの飛行シーンは特に圧巻です。圧倒的な力強さとスピード感、ぐるぐる回るダイナミックなアクション。杖ついて、長いマントの裾を引きずってゆっくり歩いてた姿とは別人です。(演出として、わざとその対比をはっきり出してるはず)

「通りがかりの坊やがキスしたところで、そんなの真実の愛のキスなんかじゃねーよ!」というのは、アナ雪で観られた「出会ったばかりの得体の知れない男との間に永遠の愛なんかねーし!」という展開と同じで、はっきりと通りがかりの王子不要論を打ち出しています。こういうのは潔くてたいへん清々しい。非常に好感が持てます。

なにせワタクシ、幼児の頃からお姫様系の童話のエンディングが「王子様とお姫様は結婚して末永く幸せに暮らしました」というお決まりのパターンだと、周囲の大人に「ねえ、ねえ、幸せに暮らしたそのあとはどうなったの?末永く幸せ、の次はどうなるの?」と尋ねて回って、めちゃくちゃ嫌がられるような子供でございましたよ。おほほほほ。だってホントにそれが不思議でならなかったんだもん!いまでも不思議です。(本気です。真面目に言ってますw)

恋愛と結婚制度がくっついちゃったことを「ロマンチックラブイデオロギー」と呼んだりする訳です。うん。そうしたい人はそうすればいいんじゃない?と思います。それでシアワセな人たちもたくさんいらっしゃる。でも、誰でも恋愛→結婚のコースを辿らなきゃいけないとするとそれはものすごくハードルが高いし、無駄だらけのように思います。大真面目に恋愛するなんて、そもそも大事故みたいなものだったり、壮大な無駄の極致でしかないはずです。「だが、それがいい」という酔狂な人にしか味わえないような、ある意味、たいへん贅沢な代物ではないでしょうか。だから、別に恋愛というステップを踏まなくても、生理的にダメじゃない人と、お互いに条件をすりあわせた上でくっつくほうが安全で確実なんじゃないだろうか。

この映画では、「真実の愛などない」「真実の愛などない」「真実の愛などない」と、主人公たちが繰り返し口にします。しかし、そのセリフが重要な場面で繰り返されればされるほど、逆説的に現代にいまだはびこる男女間の「真実の愛」への渇望や信仰のようなものが透けて見えてきます。そしてそれは、もうそろそろ、そういう呪縛が解けてもいいのでは、というメッセージでもあるように感じられます。

(えーとですね、だからといって、十代の少女が、親同士が勝手に決めて、会ったこともない人のところに嫁と言う名の人身御供に出されたり、女性が家畜や奴隷のような扱いを受ける世界がいいなんて、これっぽっちも思ってませんよ!冗談じゃない。念のため!!!)

この映画での結論は、血縁はないけど(昔愛した男と別の女の間に産まれた)聡明なカワイイ女子を養子に迎えて、適当な婿でもとって、あとは忠実なイケメンの下僕がいて、王国は豊かで幸せではっぴ〜♪ なわけですが、これは母系社会の究極理想型、なのかもしれません。

女戦士の部族アマゾネスは、繁殖(といっていいのか?)のためにだけ男性をどこから連れて来た、という話を思い出します。ぶっちゃけ、男性はみな種馬か下僕か、ってことですな。身も蓋もないですが、もしかして、太古の社会は、そもそもそういうものだったんじゃないですかね。だから男性たちは権力や腕力で自分たちを優位に置こうとしていろんな規範を作り出したんじゃないのかな。それらが巡り巡って歴史の大部分の争いごとにつながってる、と思うんですけどね。まぁだからといって、短絡的に女性万歳!母性礼賛!というのもかな〜り怪しげなロジックではありますが。

うぇーるうぇる。翼だいじ。翼を奪うような奴は要りません。
より強靭で自由な、自分自身の翼を鍛えるところからはじめよう。


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2014/08/18(月)
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