【Book Review】なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか

誰かを好きになるという体験は、非常に甘美かつ厄介なもので、人生を豊かにするスパイスとして楽しめるうちはいいんだけど、ほどほどで止められない、止まらない…ことにもなりやすい。

5月中は、煮詰まりすぎてこじれてしまった感情とパートナーシップに関わるご相談が続きました。第三者として客観的にチャートを拝見していると、それぞれの望みや関わり方のパターンがどこでどうやって反応し合い、どうしてすれ違うのか、さまざまな可能性が透けて見えます。でもそれは自分ではなかなか気づくことは難しかったりもします。痛い目に繰り返しあって、なぜ?と真剣に問うて、自ら勇気を持って向かい合わない限りは。

ある種のパターンが埋め込まれている人種にとっては、恋は狂気、ってか凶器でもあります。いったん感情の渦の中に巻き込まれてしまったら、わかっちゃいるけど止められない止まらない。でも、それがなかったら人生は彩りも無く、寒々しい。安定して平和だと退屈するから、もっともっとと刺激の強いパターンを求める。なぜか同じタイプの人にばかり惹かれたり、無意識に同じようなパターンを何度も繰り返す。(そして、たいていは破綻する。そこまでシナリオには最初から織り込み済み)そう。わかっちゃいるけど止められない止まらない。

自分の中にある無意識のパターン、シナリオに気づかない限り、いつまでも相手役のイメージに近い人を見つけるたびにその人を理想の相手役として勝手に妄想の中で仕立て上げ(恋愛だけじゃないと思いますよ。結婚しててもまた同じじゃないかな)、自分の無意識的なシナリオの中でいつまでもぐるぐると踊り続ける。そんな風に感じます。

(私自身もまた、最後はすべて破綻することを大前提としたシナリオをデフォルトにして生きているので、このテーマはまったくもって他人事ではありませんぬ。あしからず☆)


なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか (文庫ぎんが堂)
二村ヒトシ


この本、凄く良いです。絶賛大お勧めです!
目次から幾つか見出しを拾ってみます。

○ 「恋する女は美しい」は、嘘。
○ 女性誌が女に「恋をさせよう」とする理由
○ 「さっさと結婚して子ども産んじゃえば、幸せになれる」も、嘘。
○ 自己受容していない人は、恋愛の相手を使って「自分の心の穴」を埋めようとする。
○ 心の穴からは「さみしさ」や「欠点」だけじゃなく「あなたの魅力」も湧いてくる、のに。

著者はAV監督の二村ヒトシさん。難しい言葉や、偉そうな上から目線でなく、優しく、現実のニンゲンに届く実に平易な言葉で書かれています。ここまでだけでもじゅうぶんに役立つ内容ですが、ここまでだったら他のハウツー本にも書かれているレベルかもしれない。本書の真骨頂はここから本番です。

○ 男は「インチキな自己肯定」が、できる。
○ しんどい女性は「やらなくちゃいけない」と思いこんでることが多すぎる。
○ 「あなたの心の中の男」の支配に、ご注意。

男のインチキ自己肯定って実にうさんくさいですし、女のインチキ自己肯定も多いですね。(そういう自己欺瞞のインチキ自己肯定モードにすぐ気がついてツッコミいれる。それが私の性分ですw)でもね、そういうインチキ自己肯定をしないで生きるには、この世は素直に生きるにはあまりにもしんどくて生きづらいところだともおもうのです。

そしてさらに本書は続きます。「恋愛なんてもう私には関係ないわ」と高見の見物を決め込んでるみなさまへも、そうですか?果たしてそれでいいのですか?と、本書の中には分析の刃がキラリと光っているように見えます。

○ すべての「親」は子どもの心に穴をあける。
○ 「悪い親」も「普通の親」も「良い親」も。

つまりこれはこういうことでしょう。「心の穴」の形やそこから生じるあれこれは、誰にとっても等しく存在する。その穴の形は、人それぞれなんだけど、それはみな「親(または育ててくれた人」」との関係から生じていて、避けようが無い、という指摘です。それは良い悪いじゃなくって、そういうものなんだと。

だから、穴を無理矢理塞ぐんじゃなくって、自分の持ってる穴がどういうものなのか、自分が関わってる相手がどういう穴を持ってるのか、もっとよく知って、そういういびつな形も含めて受け容れていこうよ、という話です。これはもう、恋愛だけの話じゃない。家族のありかた、親子関係、そこまで話は及んでいるわけです。誰にとっても他人事じゃないテーマです。

世間を見ているといわゆる「恋愛」的なエネルギーを、オープンに臆面も無くじゃぶじゃぶとご自分のお子さんに注いで、なんでも先回りして世話を焼いてせっせと尽くしているお母さま方(お父さんもいるのかもしれませんが)が少なくないようにお見受けします。(子どもさんが息子だろうが娘だろうが。ああ。西洋占星術では、恋愛も子どもも5ハウスで象徴されますね)

いまはもうそういう時代、といえばそれまでなのかもしれませんが、ごく率直に申し上げると、個人的にはかなりキモチ悪く感じられます。尽くすばかりの愛は重い。重すぎる。たいていは「尽くす」裏側には「こんなに私があなたのためにいっしょうけんめいになってるんだから、あなたも私を大切にして!」という強い欲求とかエゴがびっしりとこびりついていて、それは傍目にはとてもキモチワルイ、とおもうのです。(でもやってる本人は気持ちよかったりするんだよね。これがまた…)

相手がそもそもは他人であるパートナーなら、居心地が悪ければ別れる、逃げるという選択肢もありますが、親子だとなかなか簡単にそういうわけにいきませんし、「子への愛」とか「親孝行」的な言葉で修飾されて賞賛されがちな濃密で逃げ場の無い関係は、いっけん素晴らしいようにもみえるけれど、それは果てのない牢獄にもなりうる、とおもうのです。

(でも、こんなこと言ってるけど、もし自分が母の立場になったら、すっかり自分が嫌いなキモチ悪い母そのものになりそうだというはっきりした予見が、自分には若い頃からあったのも確かです。私は自分がそうなるのが怖くて、ひたすら逃げました。自覚あります)

おっと。脱線してしまった。

そしてさらに凄いことに、この本の後半では、著者の弱みや無意識的な部分までが分析されます。匿名の質問形式の対談では「ヤリチン」論が展開され、「ヤリチン」である著者の言い分や世界観を垣間みることができますし、そこに鋭いツッコミも入ります。でもこれを読むと「ヤリチン」を単に悪とみなすのは実に一面的なものの見方でしかないように思われます。

本書の面白さは、まだまだそれだけではありません。最後の対談では、著者が無意識的に自分の理想の女性像「菩薩」を現実の女性に投影している点を、カウンセラーの信田さよ子氏が鋭く指摘するあたりが圧巻です。凄いことだと思うんだけど、著者はその指摘を素直に受け容れて、狼狽する姿までもを晒しているところが、とっても好感を持てます。(プライドを命とする男性諸君にとっては、それはなかなか大変なことだと思うんだよな)

ここまで読んで、もう一回最初から本書を読み返すと、著者の言うことがまた二重三重に楽しめる構成になっています。著者の勇気や才覚にもホレボレしますが、それだけでなく、とにかくこの本を編集/構成した人は素晴らしい!!!

きっと腕利きの女性ライターさん、イラストレータさん、編集の方などの目や手が加えられているはずですが、どんなに気を使っても、だいたいこの手の本の男性著者からもわ〜〜っと臭ってくるはずの、上からの目線のオレ様臭は注意深く取り除かれ、著者自身も裸になって(そもそも著者さんはAV監督だしな〜)この本に真面目に向かい合った雰囲気がしっかりと伝わってきます。非常に生真面目な本です。

さて。本書では、「どんな人を好きになるかで、自分の心の穴がどんな形をしているかわかる」というように記されていますし、それはそのまま事実でしょう。ここでは「心の穴」と呼ばれているものが、それぞれどんな形をしているかを知るのに、西洋占星術は最高のツールだと考えています。

ちょっと長くなりすぎたので、いったんここで切ります。
この続きは次回に。著者のホロスコープが非常に特徴的なので、読みつつ、本書への考察を続けます。

あ。

「キモチワルイ」といえば、男性陣にはこちらもお勧めです。


すべてはモテるためである (文庫ぎんが堂)
二村 ヒトシ


「なぜモテないかというと、
 それは、あなたがキモチワルいからでしょう。」

いきなりここから始まる名著です。
こちらも非常におもしろいです。レビューしたい。
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2014/06/07(土)
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